非抜歯矯正

JV012_72A一般的に矯正というと、どうも歯を抜くといったイメージがあるようですが、近年、歯を抜かない矯正という言葉を耳にします。

なぜ、同じ患者様なのに、一方の歯科医院では歯を抜くと言われ、他方の歯科医院では抜かないと言われることが起こるのでしょうか?

これには理由があります。我々矯正医は、患者様の歯を治療する場合、最初から歯を抜こうと考えることはありません。何とか歯を抜かずに治療が出来ないものかと考えます。
そこで、デコボコな歯をきれいに並べたり、出ている歯を引っ込めたりするためにどこかに隙間を作ることを考えなくてはなりません。
歯を抜かなくてすむ為に次のいくつかの方法を考えます。

(1)~(3)の方法は、全てを必ずおこなうわけではありません。
特に(3)が必要な場合には患者様の了承のもとおこないます。

(1)奥歯の移動
人間の歯というものは通常28本あります(親知らずを除いて)。このうち上下左右の一番奥の歯(歯科では7番と呼びます)をもっと奥に移動できないかと考えます。
もちろん、奥に移動できる限界もあるためその移動量には個人差があります。

(2)歯列自体の側方への拡大
歯列自体の側方への拡大を考えます。
しかし、過度の拡大は治療の後戻り等の原因となるため、拡大出来る量には限界があります。

(3)削って隙間をつくる
歯というものは表面をエナメル質でコーティングされています。この部分の1/4~1/3程であれば削っても、その後きれいに研磨することにより、虫歯やしみたり等の事を防ぐことが出来ます。
そこで、歯と歯の間の部分を少しずつ削って隙間を作ります。

主には、上記の3つの方法により隙間を作り、それにより並べ替えていきます。それでもなお、デコボコ等がとりきれない時に歯を抜かない場合には、前歯を前方に出します。
矯正学上、上下の前歯の骨に対する理想的な植立(植えている)角度というものは、ある程度決まっています。しかし、その角度は一点ではなくてある程度の幅があり、その中で前方へ出すという事になります。
ただしこの場合、横顔として若干の口元の突出感や口が閉じづらいといった事が起こるかもしれません。また、骨格的な問題のある出っ歯や受け口の患者様で歯を抜かない場合には、外科的な手術が必要となる事があります。

子供の非抜歯矯正

成長期のお子さんは、顎骨も発達の途中ですので、顎骨の発育を誘導しながら治療を行うことで、非抜歯で治療できる可能性が高くなります。
大切なお子さんの歯を「抜歯したくない!」という気持ちは、痛いほど理解できますので、お早めにご相談ください。
※子供の受け口の症例や開咬の症例は、早めに治療を開始した方が良い場合もあります。

大人の非抜歯矯正

身体の成長が終わっている成人は、子供のような顎骨の発育は見込めませんが、歯列の拡大や後方移動は一定量は可能ですので、非抜歯で治療できるケースもあります。もともと歯列の幅が狭い方などは、歯列を拡げる非抜歯治療が適しています。